横に並んだ後、暫時沈黙が流れる。今更気まずさなんて無くて、私は静かにその時間を享受していた。

「なあ、俺らがしてることってさ……正しいと思うか?」

 ぼーっと前を見据えていた飛翔が、独り言のように呟く。

「えっと……何が?」

「逃げることだよ。『最後の一人になるまで』ってのがマジの話なら……『カミサマ』の思うツボじゃないか?」

「んーと……」

「要するに、消耗させて、最後の一人を手っ取り早く決めよう……ってこと」

 理にかなってはいる……私達は逃げることしか出来ない。鬼はいくら体が壊れようとも追いかけてくるし、抵抗する手段もない。
 しかも『お題』なんて与えて、私達の行動を制限してる。

 飽くまでも、このゲームは『一人』を選ぶためのものでしかない……そうだとしても、一体何の為に?

「ずっと考えてんだ、『カミサマ』の正体。でも、情報不足すぎて何も分からん……」

「……うん。あの小さい鬼だって、私達に何を伝えたいんだろ……」

 『カミサマ』が一人だけを残す訳も、お題によって失格者の末路が異なる所以も。
 鬼が救いを求めるメッセージを残した理由も──

「……小さい子と言えば」

 ふと、眠っていたはずの美月から声が聞こえた。

「半年前、幼稚園児が大勢誘拐されて、殺害された事件があったわね」

 半年前の、誘拐……? それに殺害事件って、そんな猟奇的な事件あった?

 あ……そう言えば、智也がゲームを提案してきた日、ニュースで半年前の事件がどうのって聞いたような……。

「ああ……隣の県で起きた事件か」

「そんなことあったんだ……」

「半年も前だし覚えてなくても仕方ないわ。私も今思い出したもの」

 美月はすっかり目が覚めてしまったらしく、私達の方へ体を向ける。
 まだ疲れは残っているけど、顔色は幾分良くなっているように見えた。

「数ヶ月の間に、幼稚園児が立て続けに行方不明になって、遺体で見つかったのよ。犯人はまだ捕まっていないわ」

「それ……本当の話?」

「本当にあった事件よ」

 酷い……小さな子どもを狙ってなんて……到底信じられない……。