……落ち着け私。今は飛翔にドキドキしてる場合じゃないんだよ。
 美月達を探して、早く聖歌の所に戻らないと。

 陽介は怪我してるし、聖歌は疲れさせちゃったし。置いてきちゃったの、やっぱりダメだったかなぁ……。

 少しずつ後悔が湧き出てくるけど、既に引き返せない場所まで来てしまっていて。時折教室の中を覗きながら歩き続けるしかなかった。

「ねぇ、二人が追いかけれたのって……小さい子だった?」

 ふと気になって尋ねると、飛翔は「ああ」と小さく返事をする。

 やっぱり、鬼は小さな子ども……でも、中学生の私達が必死になって逃げなきゃ無理なくらいの、本物の『鬼』なんだ。

「……これって夢なんじゃないかって……思わないか?」

「どうしたの急に。これが夢?」

「そ。あの呪文を唱えた時から、全員同じ夢を見てるって……さ」

「……そうだね」

 独り言のような飛翔の言葉に、力無く頷く。
 全てが現実味のあるただの夢だったら……そうであって欲しい。でも、走った時の息苦しさも、心を焦がす嫌悪感も、これが現実だと否応なしに突きつける。

「夢じゃなくても、皆でゲームをクリアできたらいいよね」

「皆で……か」

「うん。ほら、よく映画とかであるじゃん。誰か一人でもクリアしたら皆復活! なんて展開」

「……そうだな。お前のそういう前向きなとこ、俺は割と好きだぞ」

「すっ……きって、そこだけですか」

 ……なんなの、もう。私の気持ちも知らないで、こいつはドキドキするような事言って。いつもはからかってばっかりのなのに。

 不純だ不純。しっかりしなきゃ!

「ねぇ、この階は見終わったし、一旦上の階に──」

 廊下の突き当りまで来た所で、気持ちを誤魔化すように飛翔に向かって言いかけた時。

 ザザ、と近くの教室からノイズ音がした。

『足立悠里、鈴木拓海、古川茉美、失格』

 淡々と告げられた失格者を告げる放送。一斉に三人が失格になった、なんて衝撃より、ただ一人の名前が、頭の中をぐるぐると廻っていた。

「ま、み……?」

「三人もかよ。くそっ……おい、どうした?」

 嘘。茉美が失格? 鬼に捕まったの? さっきまで一緒にいた……茉美が?