「聖歌も疲れちゃっててさ。さっき全力疾走したから……陽介、一緒にいてくれない?」

「ゆ、結月ちゃん……!?」

「ごめん。私、やっぱり美月達を探しに行ってくる」

「なら俺も行くわ。陽介が心配だったけど、小野が一緒なら大丈夫だな」

 陽介を聖歌の隣に誘導して、廊下の鬼から見えないように、飛翔と一緒に机を移動させる。ちょっとしたバリケードだ。

「陽介くん、膝擦りむいてる……大丈夫?」

「ああ。かなり擦ったから……火傷みたいになっちゃってね」

「痛いよね……ちょっと待ってね」

 聖歌は陽介の傷口に自分のハンカチを巻きつける。一生懸命な眼差しを見て、これなら大丈夫そうだと安心する。

「聖歌。暗いからスマホのライトつけておこ?」

「あ……そうだね。ありがとう」

「でも、足音が聞こえたら絶対消してね」

「うんっ」

 聖歌はスマホのライトを付けながらこくりと頷く。陽介と一緒にいるなら聖歌もきっと安心できるよね。

「羽田姉、行くぞ」

「うん。……行ってくるね」

 聖歌達に別れを告げ、私と飛翔は辺りを見回しながら教室を出た。

 大声を出して呼ぶ訳にもいかず、美月達が走って逃げた方向を手当り次第探すしかない。
 スマホのライトで前方を照らし、足元に気をつけながら一歩、一歩と慎重に進む。

「みづきー、どこー」

 普通の鬼ごっこのルールに従うなら、鬼は普通に校舎内を徘徊しているはず。
 小さな声で呼びかけながら進むと、すぐに校舎の突き当たりまで来てしまった。

 ここは一階だから……外に面した渡り廊下を渡ったのか、それとも階段を上がったのかの二択だ。

「……なあ、羽田妹ならどっちに行くと思う?」

 飛翔からの質問に、私はうーんと唸る。

 美月ならかぁ……多分、階段は登らないと思う。リスクが高いし、挟み撃ちになったら元も子もない。
 その反面、違う校舎なら逃げ道が沢山ある。美月ならそっちを選ぶかな。

「多分、向こうの校舎に行ったと思う」

「じゃあそっちに行くか」

「ただの思いつきだよ? いいの?」

「双子なんだろ? 通じ合ってるに決まってら」

 そう言って軽快に笑う飛翔。こんな状況には似合わない眩しい笑顔に、私は思わずどきりと胸が高鳴る。