「ねぇ、美月」

「……何?」

「どうしてこうなっちゃったの? 皆、さっきまで笑ってて……裏切る、なんて、そんなの」

「結月……」

 項垂れる私に、美月はぽんと頭に手を置く。

「……人間なんて、自分本意な生き物なのよ。結月みたいなお人好しばかりじゃないってこと」

「なに……それ」

「私たちも行きましょう。"失格"が何を意味するのか分からない以上、大人しく捕まるのは愚考だわ」

 ……やっぱり、美月は大人だ。動揺なんて微塵もしてないみたいに、冷静に私を導いてくれる。
 見習わないと。皆とこのゲームをクリアするためにも。

「結月ちゃん……」

 涙をいっぱいに溜めた、不安そうな瞳で聖歌が私を見つめる。ふるふると震える指先を隠すように胸の前で押さえつけているその様子に、私は自分の馬鹿さを嘆く。

 皆、同じだ。私だけが巻き込まれた、被害者じゃないんだ。

「ごめん、聖歌。一緒に逃げよう」

「わ、私……走るのは得意じゃなくて」

「大丈夫。いざとなったら私が抱えて走るから任せて!」

「なぁにそれ……無理だよ結月ちゃん」

 ふふっと困ったように笑う聖歌。

 私が元気無くしちゃダメだよね。だって私の取り柄は、底なしの元気と生まれつき抜群な運動神経だけだし!

「懐中電灯がないと無理ね……全然見えないわ」

 美月はひとまとめに置いてある荷物置き場から、持ってきていた懐中電灯を取り出した。

「行きましょう」

「……うん」

 私は扉を出る前に、ふと後ろを振り返る。

 何かをぶつぶつ呟く聖夜。正気を失ったように不敵な笑みを湛える英治。
 檸檬はその場から動こうとせず、愛佳は魂が抜けたように床にぺたんと座り込んでいた。

「っ……」

 なんて声をかければいいのか分からなくて。私が四人を置いていくのを躊躇っていた時。
 ぱっと、英治と聖夜の目の前に、子どもが二人、現れた。

『おだいいはんしちゃダメだよ!』

「ひひっ……はは、はははっ」

「違う。違う違う違う……俺は何もしてない。俺は何も──っ」

 快哉を叫ぶ英治、ガシガシと頭を掻き毟る聖夜。子ども達の手が二人に触れた瞬間、その場から姿を消した。

『中田英治、古野聖夜、お題違反を確認。失格』

 スピーカーから流れた無機質な放送。何のお題なのかも分からない。

 お題違反をすれば即失格……絶対に逃げられないんだ。

「嘘……二人とも……っ」

「振り返らないで。前を見なさい」

 美月からぐいっと腕を引かれ、愛佳達に声をかけることもできず、私達はA組の教室を後にした。