『うらぎりもの、みーつけたっ!』

 嬉々として声を合わせた子どもたち。目の前でニタニタと薄気味悪い笑みを浮かべていて、私は思わずずりっと後ずさる。

 床を蹴り、飛び上がった子どもたちから伸ばされた手。

「ひっ……」

 私は怖くなってぎゅっと目を瞑る。けど、子どもたちの手は──裏切った三人を掴んでいた。

「えっ……」

「は……」

『いっしょに行こ!』

 綺麗に重なった声と同時に、三人は子どもたちと共に忽然と姿を消した。

 消え……た? どうして裏切った方を連れていったの!?
 皆はお題に従ったのに、失格になるのは、裏切った方……なの?

「あれ?」

 一人残った子どもは、引きちぎられたように不格好な髪の毛を振り回し、きょろきょろと辺りを見回す。

 誰かを探してる……まさか……。

「……あっ、みーつけたっ!」

 子どもはぴょんっと窓へ飛び乗ると、一切の躊躇いもなく飛び降りた。
 沈黙が席巻した教室。智也がばっと窓の外を見て、そして目を見開いた。

「清水も……いない」

「嘘……っ」

 一瞬で四人が失格になった。それも……お題に従った四人が。

「ふざけるなよ……何がゲームだ。何がお題だ!」

『"背信"のルールは"裏切ってはならない"。よって、お題に反した者を処分しました』

 誰もが言葉を失う。お題に従えと言われて、従ったら失格だなんて……もしかして、皆にもただお題の単語しか書かれてないの?

 嫌、だよ。私たち、すっごく仲がいいクラスだって、他のクラスから褒められたことだってあるんだよ?
 担任の先生だって、自慢のクラスだって、言ってくれたよ?

 ──私は、誰かが悪事に手を染めていたなんて心底どうでもいい。ただいつもの明るい、楽しいA組でいたい。

 それだけなのに……!

『これより鬼を解放します。時が来るまで、自由にお逃げ下さい』

 がちゃんっ、と扉の方から鍵の開く音がした。

「おいっ、開いたぞ!」

「に、逃げなきゃ……捕まりたくない!」

「付き合ってられるか!」

 皆が我先にと扉から走り出していく。その足音が聞こえなくなる頃には、教室に残っているのは、私と美月、聖歌、そして裏切られた四人だけだった。