雅人はきっぱりと断言した。証拠は無い。でも……これまでの裏切りによって、私達はお互いのことを信じられなくなっていた。

 聖夜の全てが疑わしくなってしまう。表情も、仕草も、聖夜らしい淡々とした口調も……全てが。

「……俺は、してない」

「ふん。そう言い張るんだ。このゲームが終われば、君が狙っている高校の推薦は僕が貰うよ」

「お前……っ!」

 お互いの点数を比較して、負けただの勝っただの、冗談交じりにからかい合っていた二人はどこにもいない。
 お互いの目に映っているのはきっと、ライバルじゃなくて、ただの敵だ。

 反論することもなく、聖夜は英治の傍に座り込んで、頭を抱えていた。

 心のどこかで、もう誰も裏切りませんように、と願っている自分がいる。誰かを失格にするかもしれなくても、これ以上クラスが壊てしまうのは嫌なのに。

 ──嫌なのに。

「私も、我が身が一番可愛いから……さ」

 また一人、裏切り者が現れた。

 辟易するほどの決まり文句。もう聞きたくなくて耳を塞ごうとしても、現実はそれを許さない。

「さ、咲……?」

 動揺したように清水咲の名前を呼んだのは、彼女の隣にいる愛佳だった。咲は縋るように伸ばした愛佳の手を払い除け、スマホの画面を突きつける。

 写っているのは、女の子と、腕を絡めて歩いている、スーツを着た白髪混じりの年増の男性。
 腰まで届くロングヘアは、愛佳が大事にしてるアイデンティティ。綺麗に手入れをされたそれは、少しぼやけた写真でもよく分かる。

「ねぇ愛佳、これってパパか──」

「黙って!」

 愛佳の怒号に、咲も皆も思わずたじろぐ。愛佳は髪を振り乱して、咲に掴みかかった。
 かたんっと咲が持っていたスマホが落ちる。けれど、誰もそんなことは気にしていない。

「何であんたがそんな写真を……っ!!」

「ちょ、やめて愛佳!」

「うるさい! 消しなさい! 今すぐ消して!!」

「まな……っ!」

 壁に追いやられる咲。我を失ったように激昂し怒り狂った剣幕で胸ぐらを掴む愛佳。