「出せよ! 俺らが何したって言うんだよ!」

 力いっぱい扉を叩く棗。智也が飛び出し、「やめろ」と制止する。

 すすり泣くような声と怒りを露わにしたような呟きが聞こえてくる。皆、顔色を窺うように目配せするだけで、誰も表立って口を開かない。

 何もしてないのに勝手に扉が閉まって、勝手に鍵がかかって。本当の都市伝説……なんだ。

 恐怖を抑え込むように拳を握りしめ、縋り付く聖歌を引き寄せる。何が起きてるのかさっぱり分からない……けど、こうなったら全員でクリアするしかないんだ。

 ……背信って、どんな意味なんだろう……何をしたらいいの?

「ね、ねぇ美月」

「何?」

「背信って……どういうこと?」

「……端的に言えば裏切りね」

「裏切り……!?」

 口を覆った時にはもう遅い。静かな空間に私の声が響き渡り、猜疑と不安が混濁したような視線が私に集まる。
 さっきまでは楽しく笑い合ってたのに……冷たい目線が、酷く辛い。

「……裏切ればいいんだな」

 ぽつりと声が零れる。皆の視線は一人の男子生徒──高本友也に注がれた。お調子者で、クラスを盛り上げてくれていた友也は、焦燥に駆られた顔で中田英治に目を向けた。

 まさか、本気なの……?

「俺はさ、お前のこと割と好きだったよ。あれを見るまではさ……」

 友也は徐に自分のスマホを操作して、こちらに画面を向けた。

 ──映っていたのは、見慣れた制服を着た、男子生徒の後ろ姿。彼の手にはスマホが握られ、上りエスカレーターの前にいる女子生徒のスカートの中が、辛うじて見えるスマホ画面に映っていた。

 これって……盗撮!?

「ばっ……友也、お前!」

「ここまで隠してやった俺に感謝しろよ」

「何言って……俺はそんなこと」

「抜かしてんじゃねぇ!」

 友也は英治に飛びかかり、周囲にいた子が悲鳴をあげる。床に倒れた英治に友也は馬乗りになって、抵抗しようと藻掻く英治からスマホを奪い取る。

「ほらよ、これが証拠だ」

 見せつけるように、カメラロールの写真を映し出す。私は思わず視線を逸らした。
 見たくない。クラスメイトが盗撮していた証拠なんて。