「おい! 前畑をどこにやった!」

 飛翔がスピーカーに向かって怒号を飛ばす。頼もしい姿に一瞬見惚れてしまいそうになるけど、それを許すまいと非情にも悪夢は突きつけられる。

『彼女には、"役目"を果たしてもらいます』

「何だそれ……ちゃんと説明しろ!」

『私はゲームの進行を務める"カミサマ"。口を噤みなさい』

 有無を言わさない口調。『カミサマ』の命令は──絶対。

『ルールを説明します。一つ、皆様には"お題"が設定されます。お題は絶対遵守され、違反した者は故意、過失問わず失格となります』

 『カミサマ』が言い終わるのと同時に、ズボンのポケットに入っているスマホが振動した。皆も同じらしく、一斉に通知がきたみたいだ。

 スマホを取り出すと、液晶画面に、ショートメッセージからの通知が表示されていた。

 送り主の名前は『遘√?谿コ縺励◆』と文字化けしていて読めない。恐る恐るメッセージを開くと──そこには『秘匿』の二文字が記されているだけだった。

 『秘匿』って……何かを隠すって意味だっけ。

 全員同時に送られてきたメッセージ……多分、これが"お題"だ。不用意に変なこと言っちゃったら、私は"失格"になる……でも、一体何を隠せばいいの?

『二つ、勝利条件は鬼から逃げ切ること。三つ、"カミサマ"の命令には従うこと。以上』

 淡々と紡がれる言葉。人とは思えない抑揚のなさと異質な声音。

 お題も命令も絶対遵守……っていうか、鬼って一体誰? 普通の人なの? それとも、昔話に出てくるような本物の鬼?
 しかも逃げ切るって……捕まったらダメ、ってことだ。それってどういう意味?

 思考が……上手くまとまらない。

『では、"背信"を課せられた者は、お題に従ってください』

 ぷつり、と放送が途切れるのと同時に、開けっ放しだった扉が突然一人でに動き、大きな音を立てて閉まった。

 恐怖で動けない私達を絶望の淵へ追いやるように、がちゃんっと鍵を掛けたような音が木霊する。
 もしかして……閉じ込められた!?

「んだよ……!」

 棗が駆け出し、鍵を弄り扉を激しく揺らす。でも、派手な音がするだけで開く気配は無い。