「違ったらごめん。もしかして下の名前、あんまり好きじゃない?」
「…すごいね、日向くん。何でも私のこと、当てちゃうね。」
「梅原さん、ちゃんと表情は素直でわかりやすいよ。」
「そっか。」
俯いてしまった紫月の顔が、ゆっくりと上向きになる。紫月は近くに咲く紫陽花を見つめて、口を開いた。
「…紫陽花の季節に生まれて、しかもその日は月が綺麗だったんだって。なんか、安易だけど妙にロマンチックだよね。あんまり、似合ってないから…名前負けかも。」
「そうかな?」
「紫陽花みたいに綺麗に咲けないし、月みたいに誰かを照らしたりできない。そもそも月は自身が光ってるわけじゃないしね。光れないってところくらいかな、同じなのは。」
無理矢理笑った紫月の笑顔が、日向の胸を締め付ける。さっきまで柔らかく照れたように笑っていたのに、自分のことになると一瞬で表情が硬くなって、寂しそうになる。
「まだ咲いてないだけで、死ぬまで咲けないって決まったわけじゃない。それに、元々綺麗で真っ白みたいなところ、似てない?月は確かに自分で光らないけど、太陽に照らされれば光る。梅原さんも同じかもしれないよ。誰かが照らせば、誰よりも明るく光る。」
真っ直ぐな日向の目が紫月を捉えて離さなかった。ただの名前の話だというのに、そんな風に思ってほしくないと言っているようにも聞こえるくらい、日向の眼差しは切実で、真剣だった。自分のものなのに好きではない、ただの名前の話だというのに。日向の言葉には信じたくなるような強さがある。真剣な声に紡がれた言葉たちを、そのまま飲み込めたらいいのにと思うものの、それを邪魔する自信のなさが紫月にはある。
「なんかさ…今日の日向くん、ちょっと変じゃない?お酒でも飲んでる?」
「飲んでないよ。普通に営業行って、戻ってきて、書類確認しようかなって感じで話したでしょ?。」
「そうだけど…なんか、変。営業トークっていうのかな。すごく…なんだろ、私に都合のいいことばっかり言う…。」
紫月が言葉を選びながら落としたものたちを、日向は一つ一つ丁寧に拾い上げてくれる。そして、抱え終わった日向はくしゃっと笑った。
「…すごいね、日向くん。何でも私のこと、当てちゃうね。」
「梅原さん、ちゃんと表情は素直でわかりやすいよ。」
「そっか。」
俯いてしまった紫月の顔が、ゆっくりと上向きになる。紫月は近くに咲く紫陽花を見つめて、口を開いた。
「…紫陽花の季節に生まれて、しかもその日は月が綺麗だったんだって。なんか、安易だけど妙にロマンチックだよね。あんまり、似合ってないから…名前負けかも。」
「そうかな?」
「紫陽花みたいに綺麗に咲けないし、月みたいに誰かを照らしたりできない。そもそも月は自身が光ってるわけじゃないしね。光れないってところくらいかな、同じなのは。」
無理矢理笑った紫月の笑顔が、日向の胸を締め付ける。さっきまで柔らかく照れたように笑っていたのに、自分のことになると一瞬で表情が硬くなって、寂しそうになる。
「まだ咲いてないだけで、死ぬまで咲けないって決まったわけじゃない。それに、元々綺麗で真っ白みたいなところ、似てない?月は確かに自分で光らないけど、太陽に照らされれば光る。梅原さんも同じかもしれないよ。誰かが照らせば、誰よりも明るく光る。」
真っ直ぐな日向の目が紫月を捉えて離さなかった。ただの名前の話だというのに、そんな風に思ってほしくないと言っているようにも聞こえるくらい、日向の眼差しは切実で、真剣だった。自分のものなのに好きではない、ただの名前の話だというのに。日向の言葉には信じたくなるような強さがある。真剣な声に紡がれた言葉たちを、そのまま飲み込めたらいいのにと思うものの、それを邪魔する自信のなさが紫月にはある。
「なんかさ…今日の日向くん、ちょっと変じゃない?お酒でも飲んでる?」
「飲んでないよ。普通に営業行って、戻ってきて、書類確認しようかなって感じで話したでしょ?。」
「そうだけど…なんか、変。営業トークっていうのかな。すごく…なんだろ、私に都合のいいことばっかり言う…。」
紫月が言葉を選びながら落としたものたちを、日向は一つ一つ丁寧に拾い上げてくれる。そして、抱え終わった日向はくしゃっと笑った。



