「違うの?」
「観察力は確かにないと気付かないかもだけどさ、いつもと違うって思うってことは、いつもを知ってる、ってことじゃない?」
「あ!」
そう問われて初めて、その視点に気付く。いつもを知っているということは、その人のことを見ているということだ。
「…いつもの姿がわかるくらい、気にかけてくれてるから気付ける、ってこと?」
「うん。そういうこと。」
にこっと笑った日向は、仕事中よりも少し幼く見える。無意識に仕事中の日向のことを思い浮かべて比較していた自分に気付いて、はっとする。
「そっか、こういうことか!」
「ん?」
「今の日向くんの笑った顔は、仕事中のとはちょっと違うなって。『いつもの日向くん』と『そうじゃない日向くん』の違いがわかるかもしれないって思ったの。」
「…なるほどね。あの、それがわかるってことは、さっきの梅原さんの言葉を借りると俺のことを『気にかけてくれている』ってことになるけど、その解釈でいい?」
「あっ!私レベルが日向くんのことを気にかけるだなんてそんな!日向くんは私が何かをしなくても、いつも仕事も人間関係も完璧で…。」
自分よりも明らかに様々な面において上手な人を気遣う前に、自分にはもっとやるべきことがあるし、他人にかまけている場合ではないことは明白だ。また失礼なことを言ってしまったかと思って申し訳なさが襲ってくる。
「ごめんなさい、また失礼なことを…!」
「あー…いや、全然。むしろ、自分にとって都合よく捉えてもいいか、聞こうと思ってた。」
「日向くんにとって、都合がいい…?」
「梅原さんが俺のことを気にかけてくれていたという事実はあるって、思ってもいいの?」
「へっ…?」
真っ直ぐな視線に貫かれながら言葉にされると、自分は相当恥ずかしいことを口走ったのだということがわかる。しかし、否定はできないし、したくはなかった。日向は入社した時からずっと近くにいてくれたし、入社当初、緊張して人とあまり話せなくて、愛想もあまりなかった紫月に分け隔てなく、優しく話してくれたのも日向だ。―――事実は、なくはない。
「観察力は確かにないと気付かないかもだけどさ、いつもと違うって思うってことは、いつもを知ってる、ってことじゃない?」
「あ!」
そう問われて初めて、その視点に気付く。いつもを知っているということは、その人のことを見ているということだ。
「…いつもの姿がわかるくらい、気にかけてくれてるから気付ける、ってこと?」
「うん。そういうこと。」
にこっと笑った日向は、仕事中よりも少し幼く見える。無意識に仕事中の日向のことを思い浮かべて比較していた自分に気付いて、はっとする。
「そっか、こういうことか!」
「ん?」
「今の日向くんの笑った顔は、仕事中のとはちょっと違うなって。『いつもの日向くん』と『そうじゃない日向くん』の違いがわかるかもしれないって思ったの。」
「…なるほどね。あの、それがわかるってことは、さっきの梅原さんの言葉を借りると俺のことを『気にかけてくれている』ってことになるけど、その解釈でいい?」
「あっ!私レベルが日向くんのことを気にかけるだなんてそんな!日向くんは私が何かをしなくても、いつも仕事も人間関係も完璧で…。」
自分よりも明らかに様々な面において上手な人を気遣う前に、自分にはもっとやるべきことがあるし、他人にかまけている場合ではないことは明白だ。また失礼なことを言ってしまったかと思って申し訳なさが襲ってくる。
「ごめんなさい、また失礼なことを…!」
「あー…いや、全然。むしろ、自分にとって都合よく捉えてもいいか、聞こうと思ってた。」
「日向くんにとって、都合がいい…?」
「梅原さんが俺のことを気にかけてくれていたという事実はあるって、思ってもいいの?」
「へっ…?」
真っ直ぐな視線に貫かれながら言葉にされると、自分は相当恥ずかしいことを口走ったのだということがわかる。しかし、否定はできないし、したくはなかった。日向は入社した時からずっと近くにいてくれたし、入社当初、緊張して人とあまり話せなくて、愛想もあまりなかった紫月に分け隔てなく、優しく話してくれたのも日向だ。―――事実は、なくはない。



