「天海蓮花です！愛奈の妹です。一ヶ月間よろしくお願いします‼」

『Stella Production』本社の社長室、目の前のソファに座る『Glow』に向かってそう言った。

みんなが何か言葉を返してくれる……ことはなかった。

ナギサ君はメモを取ってくれてるみたいだけど、アヤトは無関心、ミズ君はスマホをいじっていて、エイリ君はグースカ寝ている。ユラさんは私のことを観察してるように見えるし、お姉ちゃんはニコニコしながらこちらを見ている。

なんでこうなったんだっけ？

さかのぼること数十分前……

ビルに入った私は、受付の女の人に誰だこいつという目で見られながら名前を告げ、急に眼の色が変わった女の人が言った場所に向かう。

愛奈がいる社長室は、このビルの一番上、最上階の八階。

エレベーターに乗って八階のボタンを押す。

無駄な揺れや音を立てないエレベーターはスルスルと上に登って行って、ポーンと軽い音が鳴る。
エレベーターのドアが静かに開いて、エレベータを降りる。

八階のフロアには、部屋へとつながるドアが三つしかなかった。

受付の人からもらった地図を見てみると、真ん中のドアが社長室につながるドアだった。

そのドアの前まで行って、一応社長室のため、コンコンと軽くノックをする。

すると中から「はーい」という、愛奈の軽い返事が返ってきた。

「蓮花です」

そう言うと「どうぞ―」とまた軽い返事が返ってきたので、そっとドアを開けて中に入った。

「失礼します」

そう言って、部屋の中を見回すと、さすがフロアの三分の一を使っているだけあってとても広い。

手前の方に高級そうな低い木の机が一つ置いている。
それを囲むように、大きな革張りのソファが一つ。そのソファの反対側に、一人用のソファが小さな台を挟んで二つ並んであり、奥と手前に同じ風に一つずつソファが置いてある。
左右の壁には、資料や本などがずらりと並んでいる本棚が置いてあって、その片方の壁にはドアが一つ設置されていた。
そして、一番奥には社長専用とみられるデスクが置かれており、愛奈がそこに座って大量に重なった資料とにらめっこしていた。

「愛奈、見ないかもしれないって何よ！見ないかもしれないって～～！し・か・も！あのメッセージはさすがに急すぎるからね！」