こんにちは、推し様

「あ、あの!誰にどれを渡すかとか教えてくれませんか?次この人たちとお仕事するときは、私が一人でできるようになりたいので!」

そう言ってミズキに頼んでみる。

「いいよ」

意外とすんなりOKしてくれた。

「それなら早く行くよ。時間ないんだから。ついてこれないんだったら逆に足手まといだから」

そう言って毒を吐くミズキはどことなく優しく感じた。

「もちろん」

そう言い返して、ミズキに走って追いついく。

はぐれないために、ミズキの裾をキュッとつかんだ。

「!……」

ミズキが驚いたようにこちらを向く。

どうしたんだろうと思って尋ねてみるけど、「何でもない」と冷たく返された。

デパートの中にあるおしゃれなものが売っているお店に入る。

「これ、同期ダンスグループに渡すやつね」

そう言って私の持っているかごに入れてきたミズキ。

かごの中を覗き見ると、『米粉使用!ヘルシーなバタークッキー』と書かれていた。

あれ?なんで米粉なんだろう……普通のやつ買えばいいのに。

「グループの中に一人身長がめっちゃ高くて大人な感じの子いたでしょ。その子小麦粉アレルギーだから」

ミズキが私が疑問に思っていることを察したのか、そう言ってきた。

「そ、そうなんですね!」

そう言って、ノートを取り出してメモする。

「そんなことも目もするんだ。結構偉いんだね」

そう言いながらグシャッと頭をなでられた。

あれ?なんだろう……?ずっと思っていたけど、出版社を出る前より断然優しくなってる。

そう思っても、失礼すぎて口には出さなかった。
……というか出せなかった。

そんなこと言ったらまた毒舌が作動してややこしいことになりそうだったから。

「ほらほら、ぼさっとしてないで次々~!撮影までもう時間ないんだから」

ミズキがそう言って私の腕を引っ張たので、「えっ⁉」と言いながら店内の時計を見ると時間が撮影三十分前になっていた。

「ほ、ほんとだっ!ごめんなさい、私がもたもたしてたから!」

そう言って、逆に私が小走りになる。