事件発覚のお昼過ぎ、テレビやネットの速報で「腐敗が進んだ遺体が発見された」と報じられた。

【速報:京都府〇〇市の住宅で、腐敗が進行した遺体が見つかりました。警察は、この家に住む住人の可能性があるとみて身元の確認を進めるとともに、事件と自殺の両面で捜査を進めています。】

近隣住民の声が画面を埋める。

「小さい頃は、とても賑やかな家族でしたよ」

「みんな成人して家を出てしまって、最近はお嬢さんとご主人だけを見かけていました」

「昔は兄弟喧嘩の声はよく聞こえていました」

「ご主人のお店はよく利用していましたよ」

顔を伏せた住民たちの証言が流れ、やがて彼女の中学時代の卒業アルバムの写真がテレビに映し出される。

その後、警察の現場検証の結果を受け、報道は「自殺」の見方で整理される。

【京都府〇〇市の住宅で見つかった遺体は、同居する石田朝日(いしだ・あさひ)さん(25)と確認されました。発見時、遺体は腐敗が進行しており、室内から遺書とみられる文書が見つかっています。警察は現時点で事件性はないと判断しています。】

報道自体は短くまとめられたが、「同居していた家で遺体が数日間発見されなかったのか」という点が大きな注目を集め、ネットで検索する人が一気に増えた。

さらに、誰がどのようにして情報を得たのかを巡る動きの中で、当人の本アカウントや鍵付きの裏アカウントの痕跡が特定され、トップ画像や過去の投稿が転載され始めた。

情報は瞬く間に拡散し、哀悼の声と好奇・批判が入り混じる場となっていった。