父親は放心状態の中、電話越しで待つ派遣会社の担当者に伝えた。

「娘は……、
……自殺していました。」

この事件は、両親が3年ほど前から別居中で、3兄弟の真ん中に生まれた彼女は兄弟とも仲が悪く、疎遠状態であったという事情があり、数年前から父親と娘の2人で暮らしていたという生活の中で、家族であるにも関わらず普段からあまり会話もなく、コミュニケーションを取れていなかったが故に、同じ屋根の下で暮らしながらも、彼女の遺体が数日間発見されずに放置されていたという現実、そしていとも簡単に故人が特定され、彼女のSNSの裏垢すらも暴かれ、自殺に至った背景が浮かび上がったことが、悲惨であるとしてニュースにまで取り上げられることとなった。

「本人が悪い、死んで当然だ」と言う者もいれば、彼女の生い立ちや家庭環境を「可哀想だ」と哀れむ者もいた。

また、彼女の死後、年に一度、彼女の実家に花を手向ける者まで現れるほどだった。

残された者は突然の知らせに動揺し、困惑する。

理由も聞かされず、生きることを諦めたその意志も知らされず、何の役にも立てなかったことを悔やみながら、これからも生きることになる。

死ぬまで癒えない苦しみを背負って、生きていくことになる。

これからも、あなたがもうこの世にはいないという事実を受け止めながら、生きていかなければならない。

また、ある者は彼女が命を絶ったことを人づてに聞き、絶望する。

そして深く沈み、泥や砂で覆われ隠されていた嘘や真実を知ったとき、周囲の者たちはある人物に、静かに、しかし確かに軽蔑の眼差しを向けることになる。