世界は地獄でできている

コンコン

会議室のドアをノックし、大矢は扉を開ける。

「…失礼します」

滅多に来ない会社の上層部の者までいた。

彼を冷たい目で見る。

大矢は冷や汗が止まらなかった。

「おはよう」

「おはようございます…」

「大矢君、…石田さんのニュースは知ってるか?」

「………はい」

「聞きたいことはひとつだけや」

「………」

「彼女の死に大矢君は関わってるん?」

「………」

「彼女が亡くなったことは非常に残念で今も信じがたいけど、彼女はこの会社にはもういないし、過去のことを掘り下げようとは思わへん」

「はい……」

「彼女のSNSの投稿の件はもう知ってると思う。マスコミや野次馬とか、何かしら騒動がこれからあるんかと思うんやけど………はじめての経験やから戸惑ってる。彼女の死に関わっていないのなら、マスコミに聞かれてもはっきり無関係と言いたい。本当のことを知りたくて今日はきてる」

「………えっ…と」

大矢の戸惑いに察した社長はそれ以上問い詰めなかった。

「騒動が落ち着くまで………しばらくの間でいいから自宅待機してほしいんやけど、どうやろか」

「……はい」

大矢は追究されなかったことに安堵する。

でも実際はこの時点で、そんな甘い事態では無かった。