現実味がない。

彼女がこの世にもういないことが理解できない。

もう会えないなんて、思えなかったし、信じられなかった。

彼女が死んだと聞いて、2日目の朝だった。

信じられないけど、ネットニュースに載っていた。

『変死体、この家に住む長女石田 朝日(25)さんと判明!死後1週間ほど経過していた?!』

捜査関係者によると、父親と娘の2人暮らし。数年前から母親とは別居中。きょうだいとは幼少期から仲が悪く、幼い頃はきょうだい喧嘩が隣人にも聞こえる程多かったという。現在は兄弟共に遠方に住んでおり疎遠状態。

あることがきっかけで2年前に実家に戻った朝日さん。父親は数年前に自営のケーキ屋さん業をたたみ、今は運送業に勤めており、娘とは帰宅時間がバラバラで会話することもなかったそうだ。その為、遺体の発見が死亡してから1週間ほど遅れてしまう。彼女の遺体は腐敗が進み、一部白骨化し、虫が群がっていたと…と親族は語る。

「あそこまでの遺体を見るのは滅多にないですね。」発見当初、捜査に関わっていた職員は嘔吐するほどの悲惨な状態だったという者もいたが、「下半身に毛布やゴミ袋を巻いていて、床にも雑巾やタオルがたくさん引かれていました。後始末をしやすいように彼女なりの優しさだったのでは?」と言う者もいた。

また、朝日さんが書いたと思われる遺書も見つかっており、警察は事件性がないとしている。

過去の『家庭環境』が問題だったのでは?という新事実が浮かび上がっているが…。

どうしてこうなってしまったのか―――



この男、大矢はあることを知っていた。

喪失感に苛まれる中、彼はSNSを開く。

進み、たどり着いた先はある人のアカウントだった。

『asahi ishida』

この男は、彼女が利用している2つのSNSサービスのアカウントを知っていた。

不倫関係を解消してから彼女が死ぬ2日前まで彼女に知られないように彼女のアカウントを覗いていた。

2日間はどうしても仕事が忙しく、また、子どもの世話をしなくてはならなかったため、見ることができなかった。

時間が空いたり、仕事の休憩中は義務感のように彼女の投稿を覗きに行っていた。

この男も、また、

彼女に依存していた。

大矢は彼女が命を捨てた1週間前、彼女がSNSに奇妙なストーリーを投稿していたことを思い出す。

彼はその投稿をスクリーンショットしていた。

真っ暗の背景と共に白字で綴られた文章を彼は見逃さなかった。