朝、目が覚め、起き上がる。

身体がだるく、体温を測ると、38度を越えており、会社に連絡し、今日は休みをもらった。

彼女が死んだことは彼女が以前勤めていた会社にもすぐに広まった。

彼女がこの会社で働いていたとき、誰よりも彼女が大矢を慕っていたことを知ってる者は多く、大矢の心中を察した。

『大丈夫か？………会社は気にせず何日かゆっくり休みや』

上司にそう言われた大矢は、内心、彼女のことを聞かれるのではないかとヒヤヒヤしたが、誰からも詮索の言葉はなかった。

ベランダに出て、煙草に火を付ける。

「夏君、送ってくるね」

「……うん」

幼稚園に通わせている1人娘を園まで送る為、妻がベランダに座り込む大矢に声をかけた。

「パパー！行ってきまーす」

「うん。行ってらっしゃい。気ぃつけて」

娘が玄関で靴を履いている間に妻がまた大矢に話しかけた。

「夏君、会社どうした？」

「……熱あって休んだ」

「……そっか。………今日、このまま実家行ってくるね」

専業主婦の妻は車の鍵を持って家を出た。

風に煽られ、煙草の煙が空へと昇る。

憂鬱だった。