授業中の教室は、静かだった。
少しだけ張り詰めた空気はひんやりとしていて、少しだけ開いた窓から風が吹き込み、カーテンが翻っている。

運良く蒼の隣になれたから、わたしはさっきからずっと蒼を見ている。

教科書を開いているけれど、視線は全く教科書に向けられていない。
シャーペンを握っている手は力が込められているように見えた。

ソワソワと窓の外を見たり、たまに先生の方を見て、板書を写したりしている。

後ろや前、左隣に座っている子は、蒼に全く興味がなさそう、というかむしろ避けている感じさえする。

(……やっぱり、雰囲気が変わったな)

髪型も、服の着方も、雰囲気も。

私の蒼の記憶は中学1年生の春で止まっている。
その時は、制服もきっちりと着ていて、ネクタイはきゅっと絞められていたし、シャツのボタンは一番上まできちんと留まっていた。

だけど、今は違う。ネクタイは緩く締まっていて、シャツのボタンは2つ開いてる。
シャツは肘までまくりあげていている。

一言で言ったら、「気崩している」

私が知っている蒼とのギャップが激しい。
だけど、それが少しときめいてしまう。