新学期の朝、教室の扉がゆっくりと開いた。新しい風が、ざわつく教室の空気に滑り込む。

夏休み気分がぬけきらず、おしゃべりをしていた人たちは、先生が言った「転入生」というワードに反応し、教壇の方へ向いた。


なんて単純な人だろう。

転入生が誰だろうが、俺には関係ない。そう思って、俺は窓のそとをぼんやりと見つめていた。
けれど。

そんなぼんやりした頭に、その声だけは滑り込んできた。

波野(なみの)青月(せづき)です。」

せ、づき・・・?
もう忘れようと思っても、いつも心の隅にいた青月。もしかして、あの青月か?

気になって、ちらっと声がする方を見てみた。
すると、そこにはあの頃と何も変わらないけれど、少しだけ大人びた青月の姿があった。

そして、目が合って、柔らかく微笑まれた。