さよなら、痛みの恋 ― そして君と朝を迎える



 それから数日間は、まるで映画のようだった。

 朝はテラスで焼きたてのパンとトロピカルフルーツ。
 昼は白いワンピース姿の紗夜と、海辺を裸足で歩いた。
 夜はキャンドルの灯るディナーで、照れくさそうにシャンパンを乾杯した。

「悠真、あれ見て! 夜の海って、星みたい……」

「それ、紗夜も言われてそうだな。星みたいって」

「ふふ、誰に?」

「俺に決まってるだろ」

 そう言って、彼はそっと手を握った。

 手のひらが重なる。それだけで、心がふわっと軽くなる。

「ねえ……いまの私って、幸せそう?」

「めちゃくちゃ。世界一」

「ふふ、私も、そう思ってる」

 夜の海岸に並んで座り、波の音だけがふたりを包む。
 何も言葉がなくても、互いの気持ちが伝わってくる時間だった。