「最近、よく話してるし……課長、秋山さんにだけ柔らかい顔してるから」
「あ、あの……ただの業務上の会話です。課長は誰にでも優しいですし」
精一杯の笑顔で返したが、内心では冷や汗が流れていた。
(バレたら……終わるかも)
真尋は直属の上司であり、社内恋愛は基本的に“黙認”とはいえ、彼女のような若手にとっては立場を揺るがす危険にもなる。職場での噂話は、時に凶器だ。
その夜、結衣は会社近くのビジネスホテルのロビーで真尋と落ち合った。
「……美里さんに言われたの。最近、仲良いねって」
真尋の表情が一瞬だけ固まった。



