結衣はそっと、指先で彼の前髪をなでた。すると、真尋がゆっくりまぶたを開ける。
「……起こした?」
「ううん。もう起きようと思ってたところ」
「嘘だな。それ、俺のセリフだ」
ふたりで目を合わせて笑った。こんな朝を、これから何度も繰り返していけるのだと思うと、胸がじんわりとあたたかくなる。
「……結衣」
真尋が、布団の中で彼女をそっと抱き寄せた。
「まだ、信じられないよ。こうして一緒に暮らしてるなんて」
「私も。まさか、自分が海外までついてくるなんて思ってなかったし」
「ついてきてくれて、ありがとう」
「……ついてきたんじゃない。私が選んだの」
結衣が真剣な目で言うと、真尋は少し目を細めた。
「その言葉、一生忘れない」
「忘れてもいいよ。どうせ毎日、私が隣にいるから」
彼の胸元に顔をうずめて、そうつぶやく。
しばらくふたりで静かに抱き合っていた。やがて、真尋が少し悪戯っぽく言った。
「じゃあ、今日の朝ごはんは“結衣担当”でいい?」
「え、今の流れで家事振ってくる!? ひどい!」
「だって、君が“ついてきたんじゃなくて選んだ”って言ったから」
「詭弁だよそれは……!」
結衣は笑いながら布団を蹴り上げた。けれど、その顔は、どこまでも幸せそうだった。



