「……結衣が不安になったの、俺のせいだと思う」
「違うの。私が、ちゃんと“信じる勇気”を持てなかっただけ」
そのとき、真尋はふっと立ち上がり、ジャケットの内ポケットから、ひとつの小さな箱を取り出した。
「……本当は、結衣の誕生日に渡すつもりだった。でも、今がその時だと思う」
差し出されたのは、小さなリングケース。結衣が目を丸くするのを見て、真尋は笑った。
「中、空っぽなんだ。プロポーズの言葉だけ、先に渡す」
「……え?」
「この先、どこにいても、どんなに忙しくても、どんなに距離があっても俺は、君の隣にいるって決めてる」
結衣の目から、ひとしずく涙がこぼれだす。
「今すぐ結婚しようとか、そんなこと言わない。でも、いつか結婚したいと思ってる。そのために、俺、ちゃんと未来を作るから」
真尋が、彼女の手を取った。
「……結衣が怖いときは、俺が守る。結衣が泣きたいときは、俺がそばにいる。だから——俺を信じて、そばにいてくれませんか?」
まるで告白のような、誓いのようなその言葉に、結衣は小さく、けれど確かに頷いた。
「……うん。もう、逃げない」
「ありがとう」
その夜、二人は久しぶりに同じベッドで眠った。言葉よりも、肌のぬくもりが心を癒してくれる。
不安も、過去の傷も、全部包み込むように。
ただ想いを、ゆっくりと、何度も重ねた。



