秘密のままで、あなたと。




 差出人のメールアドレスはランダムな英数字の羅列で、返信もできない。悪戯にしては内容がリアルすぎて、胸がざわついた。

 それからというもの、結衣は真尋からの連絡ひとつひとつに敏感になった。

 笑顔の写真にも、「誰が撮ったの?」「誰といたの?」と、言葉にできない疑念が膨らんでいく。


 そんなある夜。


「ごめん、今日会議が長引いて、連絡できなかった」


 真尋からのメッセージに、結衣はとうとう返信してしまった。


【現地の女の人と会議だったの?】


 すると、すぐに電話がかかってきた。

 「結衣、何があった?」

 「……知らない。知らないけど、でも……こんなメールが来て、私は……」


 声が震えた。真尋は深く息を吐いて言った。


 「俺のこと、信じられない?」

 「信じたい。でも、怖いの。離れてるから、何をしてるか、誰といるか……見えないのが、怖いの」


 電話越しの沈黙。そのあと、彼は静かに言った。


 「わかった。……俺、日本に一度戻る」

 「えっ……?」

 「今週末。たった数日だけど、会いに行く。だから、そのとき直接言わせて」

 「……なにを?」

 「俺が、どれだけ君を想ってるかを。誰が何を言おうと、俺が“君の味方”だってことを」


 その言葉に、結衣ははっとした。


 (私は——、また“疑う自分”に負けかけてた)


 変わりたいと願っていたのに、少しの不安で、また逃げ出しそうになっていた。

 ——でも彼は、立ち止まらなかった。誰よりも、まっすぐに愛してくれていたのに。