佐伯真尋の異動が正式発表されてからというもの、部署の空気が少しずつ変わっていった。
「佐伯課長、海外行きなんて……本当に優秀な人って、どんどん遠くに行っちゃうのね」
「課長、送別会どうします?課のみんなでやりましょうよ!」
そんな声が日常のように飛び交う中、秋山結衣は何も言わず、ただ静かに業務に集中していた。
だけど、本当は、誰よりも不安で寂しくて仕方なかった。
でも、真尋はあくまで“上司”で、自分は“部下”。
この関係に他人の視線が注がれれば、二人で築いてきたものが一瞬で壊れてしまうかもしれない。
けれどその危機は、意外な形で迫ってきた。



