「私も、ずっと恋愛が怖かった。踏みにじられた過去があるから、誰かを信じるって思っただけで、心が震える。でも、真尋さんの言葉を聞いて……私も変わりたいって思えたの」
「なら……俺に、ついてきて」
真尋が、彼女の肩をそっと抱く。
「異動するけど、俺は逃げたくない。離れても、結衣とちゃんと向き合いたい……だけど、もう、一緒に来いとは言わない。でも、俺たちの関係を、ここで終わらせたくない」
彼の瞳は、まっすぐで、あたたかかい。その瞳を見つめ返しながら、結衣は小さく頷いた。
「私も、ちゃんと“好き”を伝えられる人になりたい。だから……離れても、私たちでいよう」
「約束だ」
その瞬間、彼女の目からぽろりと涙がこぼれた。真尋は優しく、結衣の涙を指先で拭った。
「……キスしていい?」
結衣は頷くと、誰にも見られない小さな会議室の中で、ふたりの唇はそっと重なった。
心を開いた先にある、あたたかな光。
もう、過去に怯えなくていい。
これからは、“誰にも言えない恋”を、“誰にでも胸を張って言える恋”に変えていきたい。



