【短編】わたくしの婚約者になってください。

「では、あなたとファーストダンスを踊ることにしよう」

 ダンスを申し込んできた彼らの中で、一番爵位が高いリオを選んだ。

 それに――個人的に、彼に聞いてみたいことがある。

 これはチャンスだとほくそ笑み、リオの手を取って歩き出す。

「えっ、えっ? 本当に僕がファーストダンスの相手でよろしいのですか?」
「ああ、構わないさ。しっかりリードしておくれよ? わたくし、ダンスはあまり得意ではないから」
「が、がんばります」

 緊張している面持ちで、彼がこちらを見ていた。

 向かい合い、しっかりとホールドをされて、目を見開く。

 線が細いと思っていたが、触れた手は硬い。剣を握っている人の手だ。

 彼が手にしているのは筆のように軽いものだけだと思っていたが……、考えを改めなければ。

 ちなみにわたくしも剣を握っているので、手は硬い。触り心地はあまり良くないだろう。

 だが、それは今までの努力の証。

 ダンスの音楽が流れ、ステップを踏む。こちらが踊りやすいようにリードしてくれているのがわかる。

 ……こんなに踊りやすいダンスは、初めてかもしれない。

「……リードがうまいのだな。それに、手の硬さからして……剣術を?」
「自分の身を守れるくらいには」
「よい心がけだな」