【短編】わたくしの婚約者になってください。

『そんな細腕で、なにができるというのだ』

 侮蔑(ぶべつ)のまなざしと言葉を、かけられたこともある。

 ――だが、わたくしはウェイド公爵家の一員。

 鼻で笑った相手を捻り倒し、『あなたを倒すことくらいはできますわ』と笑顔を浮かべたこともある。……これはあとで両親に叱られた。

 なぜもっと痛めつけなかったのか、と。

 再起不能にするくらいで、ちょうどいいのだとも。

 幼い頃から鍛えてばかりいたので、お茶会や夜会に参加することはほぼなかった日々。

 デビュタントで華々しく伯爵家の令息を痛めつけたので、みな恐れをなしたのか近づく人がいなかった。

 それでもあの量の求婚書が届くのだから、魅力的なのだろう。わたくしではなく、『ウェイド公爵』の座は。

 果たして、理想の男性を見つけられるのか――……いや、あの一覧の中で、一人だけ気になる人がいる。

「ロザリンドさま、ぜひ一曲、いかがでしょうか?」

 物思いにふけていると、一人の男性が声をかけてきた。

 茶髪に金色の瞳を持つ彼は確か――……そう、ウィンバリー子爵家の三男で、アダム……だったか? 声が少し、震えていた。

「そんなヤツより、私と一曲お願いいたします」

 少し傲慢(ごうまん)そうな金髪で緑の瞳の彼は、アーチボルト伯爵家の四男、ダレル……だったはず。

「あ、あの……僕とも、お願いします」

 控えめな声量の黒髪、青色の瞳の男性は、デインズ侯爵家の六男、リオ……自分と同じ年齢だったはず。

 ふむ、この中で一番線が細い。