組長様は孤独なお姫様を寵愛したい。

…勝手に触って気に障ったかな。と思ったけど橘さんの声は至って優しかった。


「…そんな気になるの?」

「はい、」



コクコクと首を縦に振る。


「わ…っ、」


すると橘さんの着物の裾を掴んでいた右手が大きな手に急に掴まれた。


そこからグイッと引っ張られて何やら橘さんの胸にすっぽり収まってしまった。


…っ、え、何…??



どうして私は抱きしめられる形になってるんだろう。



「ちっちゃいね、お前。」


すぐ耳元で橘さんの声が聞こえてピクっと体が反応する。


「それに全体的にほんと細いし、俺のタイプとは全然程遠い。」


…でも聞こえてくる内容は結構酷い。

そんな酷いことを私に間違いなく聞こえるようにこんな近い距離で話してるのだろうか。


と思っていたけど、



「でもさっきの裾掴むのはけっこーカワイかったよ。」



コーフンしたーなんて言いながら私の頭をなでなでと撫で回す橘さんの発言と行動に一気に体が固まる。


多分これが人生で初めて可愛いと言われた瞬間だ。