地獄絵図もかくやという赤黒い中で、たったひとり、むしろ穏和に月を眺めている人物がいた。
血溜まりの中で影のように立ち、袂へ両腕をしまったまま、ぼんやりと月を眺めている、白いひとえの女性。
初め、百合か、月の巫女かと勘違いした。
白いひとえの裾や袖を飾る返り血が、吹き荒ぶ紅椿のようであった。
赤い帯があれほど似合う者など、そういない。
東城――東に巣食っている鬼。
その姿はあまりにたおやかであり、女の私すら魅了する。
あれが、鬼というものだろうか。
鬼ではなく、姫と呼ばうに相応しい。
そう、東城の、鬼姫と。
「どうかしたか」
「……」
「妹巫女や?」
「……鈴原にございます」
声をかけ直してきた彼に、振り向く。
「まだ名乗っておりませんでした。わたくしは鈴原の巫女。煤祓いの一族にございます」
一礼する私を、彼は、少し呆気に取られたように眺めていた。
だから、少しおかしいのだ。
もう異常なものは祓い尽くしてしまったというのに、なにかがおかしいのだ。
しかし、妙に心は爽快としている。
血溜まりの中で影のように立ち、袂へ両腕をしまったまま、ぼんやりと月を眺めている、白いひとえの女性。
初め、百合か、月の巫女かと勘違いした。
白いひとえの裾や袖を飾る返り血が、吹き荒ぶ紅椿のようであった。
赤い帯があれほど似合う者など、そういない。
東城――東に巣食っている鬼。
その姿はあまりにたおやかであり、女の私すら魅了する。
あれが、鬼というものだろうか。
鬼ではなく、姫と呼ばうに相応しい。
そう、東城の、鬼姫と。
「どうかしたか」
「……」
「妹巫女や?」
「……鈴原にございます」
声をかけ直してきた彼に、振り向く。
「まだ名乗っておりませんでした。わたくしは鈴原の巫女。煤祓いの一族にございます」
一礼する私を、彼は、少し呆気に取られたように眺めていた。
だから、少しおかしいのだ。
もう異常なものは祓い尽くしてしまったというのに、なにかがおかしいのだ。
しかし、妙に心は爽快としている。

