† of Holly~聖の契約

「くひゃはははは!」

足元で、先ほどの笑い声が響いた。

顎を引いてみれば、黒いひとえの男がいる。

くろいひとえ……?

いいや違う。それは、あまりにも大量の血に染め尽くされたのであろう、錆色だった。

ひとえの懐に片腕をかけながら、男が歩み寄ってくる。私の頭の真横で、止まった。

「なにか、ぬし、死にかけか、それとも狂ったか。くひゃは」

男にしては高い声で、楽しくて楽しくて仕様のない笑顔を浮かべる。

その口角から覗く歯牙は、赤黒く染まっていた。

皮と骨ばかりのようなあばらの浮き出た胸に、枯れ枝のように細い手足。窪んだ眼にこけた頬。

こんなにも痩せていながら、しかしなんと、他者を恐れさせる存在感。

「……鬼にございますね」

「ひゃっひゃっひゃっ、いかにも、わしは鬼だ。そういうぬしは、よもや六条の言っておった、」

「南塔殿!!」

その時、聞き慣れた声がした。

「おぅ、六条の」

なんどう――と呼ばれた男が、風に吹かれたような足取りでくらりと振り返る。

私も首をかたりと横に倒し、声のしたほうへ向いた。

――彼だ。