突然、課長と秘密の関係になりました

 彼女さんとかかな?
と思いながら、

「うちも母親がいると言ってるだけなので」
と一彩は言ったが、

「いいから、持って行け。
 それ、お前の成績が悪くて教科書真っ二つにした母親だろ?」
と彰宏は言う。

 ……よくご存知で。

「すみません。
 ありがとうございます」

 一彩はぺこぺこ詫びた。

「このお礼は必ずや」

「いや、そんなことより、仕事のミスをなくせ。
 それに、そもそも、その肉は――」

「彰宏ー」
とテノール歌手のようないい声がした。

 品のいいロングコートを着たダンディな感じの男がかなり遠くで手を上げている。

「今行く」
と彰宏はその男に答えていた。