友人たちと温泉旅行を楽しんだあと。
『あとちょっとで着く~』
と帰りの新幹線から母親に連絡を入れると、すぐに返信があった。
『あんた、今日、近所のスーパー、牛肉、メガ盛りが安いって言ってたじゃない。
買ってきてよ』
……まずお帰りとかないのだろうか。
そう思いながらも、車で友人のひとりを送ったあと、スーパーに寄る。
えーと、メガ盛りメガ盛り。
何処だっけ?
と旅の疲れを引きずったまま、一彩はメガ盛りを探した。
妙にがらんとしたところに、一個だけ肉がもりもりの大きなパックがある。
あと一個しかないっ。
一彩は慌てて手を伸ばしたが、先に誰かがそれを取ろうとした。
長く綺麗な男の指。
思わず、見惚れる感じの繊細な指先だったが、何故か一彩は、びくりとして手を引っ込めてしまった。



