突然、課長と秘密の関係になりました

「……イケメンで若くて」
「え、いいじゃんっ」

「出世頭だけど、頑固で融通が利かなくて、目つきが鋭い……」

 もはや、今、見ているままを言っているだけだった。

「いつも私を怒鳴っている課長――

 ……が行ってしまった」
と一彩は先に出た向かいのホームの新幹線を振り返る。

 こちらを睨んだ顔のままの課長、鴻上彰宏(こうがみ あきひろ)を乗せ、新幹線は行ってしまった。

 ……今の聞こえてなかっただろうな。

 いや、隣の新幹線にまで、車内での会話が聞こえるとは思わないが。

 課長、超能力かってくらいの地獄耳だからな、と思いながら、小さなプラスチックのカップに入った冷酒をぐびりとやる。