ホームは寒かったが、新幹線の中は暖かく。
駅のコンビニで買った酒で、みんなで一杯やりはじめた頃から、かなりいい気分になっていた。
「旅最高だねっ」
「ほんとっ。
一彩も仕事のことは忘れなよ」
と乾子が言う。
「なに? 一彩。
なんかあったの?」
そう陸に問われ、
「それが前の課長が田舎に帰っちゃって」
と言うと、すぐに、
「ああ、人のいいおじさんって言ってた課長」
と返ってくる。
「その代わりに来たのがさ――」
と言った瞬間、一彩の視界にそれは入った。
向かいのホームに止まっている新幹線の窓。
誰かがこちらを見ている。



