突然、課長と秘密の関係になりました

「禍福は糾える縄の如しっていうが。
 俺はあれは、今幸せな人間には呪いの言葉だと思う。

 俺はお前と結婚して、今、人生で一番幸せかなと思っているから。
 このあと、悪いことがあるんじゃないかと怯えてるんだ。

 だから、どんどんわがままを言って、俺を困らせてくれ。
 その程度の禍いで終わるように」
と言うので笑ってしまう。

「ありがとうございます、課長。
 ちょっと気分がよくなりました」

「なにか食べられそうか?」
「そうですねー。
 樹海のママの肉じゃがとか?」
と言うと、ホッとしたように彰宏が笑った。

 ようやく、一彩が食べたいものを思いつくことができたからだろう。

「じゃあ、電話して作っておいてもらおう」
「課長」

 なんだ、と電話をするために、何処かに車をとめようとした彰宏が振り返る。