結局、彰宏が車まで抱き抱えていってくれ、車の匂いも駄目なので、窓を開けて走ってくれた。
冷たい風に髪があおられ、ちょっと寒いが、少し気分がよくなった。
「外の世界は綺麗ですね……」
と明るい夜の街を見ながら、一彩は呟く。
つわりがひどすぎて、這ってしか動けないので、産休前に休職することになってしまった。
早くおさまらないかな。
みんなにも課長にも迷惑かけてるし。
「すみません、課長」
としゅんとしてまた言うと、
「何故、お前が謝る。
謝るのは俺の方だ。
お前にだけ辛い思いをさせて。
……この間なんて、お前と同じ思いを味わうために、腐ったものでも食べてみようかと思ったくらいだ」
……いや、絶対にやめてください。



