……私が課長を殺す日が来るとは。 一彩は震えるおのれの手を見ていた。 課長を殺すくらいなら、実家に帰りたいっ。 でも、実家ここだしっ。 ダイニングとつづきになっているリビングのソファに寝ていた一彩は殺意のこもった目でキッチンにいる彰宏を振り返る。 ワンッ、となにも知らないアヌビスが足元で吠えていた。 課長を殺るなら、今だ。 今なら誰もいないから……。 いや、違う。 誰もいないからこんなことにっ。