突然、課長と秘密の関係になりました

 今、ここで偶然出会ったのも運命っ、と黒須に、

「いや、偶然も運命もなにも。
 ここ、自分の部署の側の廊下ですよ?」
と突っ込まれそうなことを思いながら、彰宏は言った。

「その、そうだ、一彩。
 お前にこの間借りた、ミステリーの新刊。

 返さなくてもいいか」

「あ、まだ読み終わってないんですか?」

 珍しいですね、と一彩は笑う。

「いや、そうじゃなくて……。

 お前と――

 俺の本棚は、一緒でいいんじゃないかと思って」

 二人で暮らして。

 二人で同じ本棚を共有しよう。

 一彩は本好きだし、このニュアンスが伝わ……

「駄目です」

 一彩はキッパリとそう言った。