突然、課長と秘密の関係になりました

 ……課長、そこ、行き止まりですよ。

 コツコツと靴音をさせながら、一彩は倉庫に近づく。

 軋む重い扉を開けながら、中を覗いた。

 彰宏は中で気配を消しているようだった。

 一彩は廊下からの光でスイッチを探し、明かりをつける。

 スチール棚にあるダンボールの陰に彰宏のスーツの肩が少しだけ見えていた。

 しかし、ようやく捕まえられそうだと思ったところで、一彩はふと正気に返った。

 これ、想像していたのと、なんか違う、と。

 男の人に義理でないチョコを渡すのはこれが初めてなのだが。

 バレンタインというのは、こういう行事だったろうか。

 さっきの黒須の、
『バレンタインとはっ』
という叫びが耳に蘇っていた。

 だが、ようやくここまで追い詰めたのだ。

 なんとしても、最後までやり遂げたい。

 受け取ってください、課長、と一彩は隠れている彰宏のもとに歩み寄る。