そのころ、彰宏は、一彩に出会わないようにしていた。
いや、同じ部署なの出会わないのは無理なのだが。
仕事中以外は会わないようにしていた。
今も、社食にもリラクゼーションルームにも行かなくてすむように、小田を連れて、ランチに来ている。
小田は、
「すみれちゃん、チョコくれるかな~?」
とまだもらってもいないのに上機嫌だ。
「お前、一彩ちゃんに……
ああ、家で会うからいいのか」
「小田。
今晩泊めてくれないか」
「いや、なんでだよ。
そして、バレンタインの夜になんでだよ」
と小田は言う。
うっかり立派なチョコをなにも考えずに作り。
自分が持っててもな、とひょいと一彩に渡したことを後悔している。



