「あれっ?
アヌビス?」
家に帰った一彩は、アヌビスを探してウロウロしていた。
令美が実家の犬が遊ばなかった犬のおもちゃがあるというので、もらってきたのだ。
実際、なんという名前だったのか、わからないらしいので、とりあえず、アヌビスと呼んでいた。
一征は、
「犬」
と呼んでいたが。
一階の端の応接室のような部屋から、灯りがもれていて、わいわいと話し声が聞こえてきていた。
覗いてみると、ソファの上、細かな刺繍がしてある外国製のクッションにアヌビス様が乗せられ、それを昴たちが取り囲んでいた。
この滅多に使わない豪奢な応接室がアヌビス様の部屋となったらしい。
やがて、一征もやってきて、みんなでアヌビスをちやほやしはじめる。
世界に名だたる声楽家も、いつも仕事でいっぱいいっぱいなキャリアウーマンも、俺様上司様も、みんなアヌビス様にかしずいているっ。



