一彩の本棚には、俺様上司との恋に関するものはない。
一彩は俺様上司が好きではない。
一征は俺様上司だ。
つまり、一彩は一征を好きなわけではない、と彰宏は思おうとしていた。
ところが、いきなり、一彩が、
「俺様上司って、課長のことですか?」
と言い出したので。
一彩は俺様上司が好きではない。
一彩にとっての俺様上司は自分だった。
つまり、一彩は自分を好きなわけではない。
という結論に彰宏はたどり着いていたのだが、もちろん、一彩にはその流れはわからなかった。
静かに出て行こうとして、
「あっ、課長っ。
そういうお話が好きなら、令美さんにお借りしてきますよ」
と背後から声をかけられる。



