今日は寒いから、一番分厚いセーターを着よう、と思ってタンスの奥から引っ張り出したら、セーターが冷えてて寒かった。
そんな一日のはじまり――。
まだ薄暗い早朝の道。
キャリーバッグをガラガラ引きずりかけた南一彩は、静かな街に音がやたら響くことに気がついた。
ヤバイ。
ご近所さんを起こしてしまう。
一彩は道を挟んで家の向かいにある駐車場までバッグを抱えて歩き、車の後部座席に詰め込んだ。
寒い、暗い、眠い。
でも、きっと楽しい旅行になるはずだ。
気の置けない大学時代の友人たちとの旅。
職場での憂さを晴らすんだーっ、と一彩は駅へと向かった。



