「最後の一個だったよー」 と帰ると、母親が、 「ありがとう。 炒めて」 と言う。 「え?」 「そこに野菜切っといたから、一緒に炒めて」 と大河ドラマを見たまま振り返りもせず言う。 「……はーい」 荷物を置き、着替えてきたあとで、ペニンシュラキッチンの上に置いていた肉のフィルムをはがす。 これ全部入れるんじゃないよね? 今、余計なこと訊いたら怒られそうだけど。 母親をチラとうかがったとき、ふと思い出していた。 『それに、そもそも、その肉は――』 と言いかけた彰宏の言葉。