響け!月夜のアジタート

獣人は唾を飛ばしながら大声で言い、拳を大きく振り上げる。レオンハルトは攻撃魔法を放つために杖を構えた。その時だった。獣人の体が誰かに殴り付けられたことで吹き飛ばされる。

獣人の体は街灯に打ち付けられて止まった。彼は何が起こったのか理解できていない様子で起き上がる。

レオンハルトの目の前に、大柄な人物が立っていた。ピタリと体に張り付いたTシャツに黒のワイドパンツを履き、短い銀髪に鋭いアンバーの目をした男性である。男性の頭と臀部には猫の耳と尻尾が生えている。

男性は起き上がった獣人に対し、低く唸るような声で「失せろ」と言った。獣人は顔を真っ青にして逃げていく。男性はため息を吐きながらレオンハルトの方を向いた。

「おいレオン、何やってんだよ」

「助かった。ありがとう。トーニョ」

男性ーーー様々な生き物の姿になれる特殊獣人のアントーニョ・セルバンテスはガシガシと頭をかく。レオンハルトは後ろを振り返る。獣人に突き飛ばされた人はまだ地面に尻もちをついている状態だった。

「お怪我はありませんか?」