響け！月夜のアジタート

「ごちそうさまでした」

食器を魔法を使って洗って片付けをしつつ、レオンハルトは身支度を整える。そしてシルクハットを被り、杖と鞄を手にして家を出た。

家を出て数歩歩けばピアノの音、フルートの音、ユーフォニアムの音、様々な楽器の音が響いている。どの音も人のようにそれぞれ違う。

（どの楽器の音も綺麗だな）

そうレオンハルトは思いながら歩いていたのだが、彼の耳に不愉快な音が入り込む。人の怒鳴り声だ。

「ちんたら歩いてんじゃねぇよ！！このウスノロが！！」

声のした方をレオンハルトが見ると、虎の獣人が薄汚れた衣服を見に纏った人を大きな手で押しているところだった。押された人はなす術なく地面に倒れる。その反応を見て、レオンハルトは押された人がただの人間であると気付いた。

何の力もない人間は差別の対象である。差別を禁ずる法律が制定された今も、人ならざる者たちの中には差別の意識が残っている者も少なくない。