響け!月夜のアジタート

「お前が「トーニョ」とか呼ぶな!!殴るぞ!!」

アントーニョの腕が一瞬で変化する。先ほどで人間そのものだった彼の腕は、今は鋭い爪を持った熊の手に変わっていた。

「そっちがその気なら僕も相手をするよ」

オルハンが何やら呪文を唱えると、彼の影の中から亡霊たちが姿を見せる。探偵事務所の中で二人は今にも喧嘩を始めそうな雰囲気である。

「止めますか?」

「そうしようか」

カナタと顔を見合わせてレオンハルトは頷く。そして睨み合うアントーニョとオルハンに声をかけようとした時、事務所のドアが勢いよく開いた。

「遅れてごめんなさ〜い!」

白いリボンのブラウスに赤いスカートの女性が息を切らせながら入ってくる。リンゴのように赤い髪をハーフツインにし、その手には一通の手紙を持っていた。

「メグ、おはよう」

「メグさん、おはようございます!」

メグことマーガレット・アンバーにレオンハルトとカナタは声をかける。美容インフルエンサー兼探偵の彼女はサキュバスだ。