窓から差し込む夕陽が、棚の文房具をほんのりオレンジに染める。
いつも賑やかだった空間が、やさしく色を変えていく。
「……終わっちゃった」
ここねは小さくつぶやいて、そっとカウンターに手をついた。
心に浮かぶのは、それぞれの顔。
たこ焼きオタクくん、美容ガチ勢のお姉さん、将来に迷う女の子、空翔くん、黒瀬くん、そしてまゆちゃん。
笑顔、涙、迷い、感謝。
ひとつひとつの出会いが、自分を育ててくれたことを
ようやく、実感できる。
「——よく、がんばったね」
背後から、やわらかい声がした。
振り返ると、店長さんがそこにいた。
いつもと変わらない、でもどこか今日だけの特別な微笑みを浮かべて。
「最初に会ったときのここねちゃんは……まるで、自分に色がないと思ってたよね」
店長は、そっとここねの肩に手を置いた。
「でもいまのここねちゃんは、自分で考えて、自分の言葉で届けて……ちゃんと、自分の魔法を、見つけられた。強くなったね」
「……店長さん……」
涙が出そうになった。
自分では気づくくらい、
この場所で、少しずつ、確かに変わっていた。
魔法文具を渡していたつもりが、
いつの間にか、自分も魔法を受け取っていたんだ。
「ここねちゃん。あなたはもう、誰かに言われた“いい子”じゃない。
あなたが選んで、あなたが信じた“自分”になったんだよ」
ここねは、こくんと小さくうなずいた。
胸の奥に、温かくて静かな火がともる。
「——ありがとうございました。
パレットに来られて、本当によかった」
最後に深くお辞儀をすると、店長もふっと笑った。
「こちらこそ。あなたと過ごせたこの時間は、パレットにとっても魔法だったよ」
店内の明かりが、少しだけ強く灯った気がした。
まるでその言葉が、魔法として空間に染み込んでいくように——。


