チリン。
閉店間際、もう誰も来ないと思っていたそのとき——
鈴の音がやさしく鳴り響いた。
「いらっしゃいませ」
ここねが顔を上げると、戸口に立っていたのは、小柄な女の子だった。
制服の袖をぎゅっと握り、下を向いたまま立ちすくんでいる。
「あ、あの……もう、しまっちゃいますか?」
「ううん。大丈夫、ゆっくり見ていってね」
そう声をかけると、彼女はほっとしたように頷き、店内に入ってきた。
店内を歩く姿は、どこか頼りなげで、自信がなさそうで……
だけど、なぜだろう。
ここねの胸が、少しだけチクっとした。
ちょっと前の私みたい……。
その子は、棚の前で立ち止まり、小さな声で言った。
「——なんで、みんな自分の気持ちに自信があるんだろう。
わたしは、なにをしたいのか、どんなふうにいたいのか、ぜんぜんわからなくて……」


